Polyhedron Tiles

  1. 手軽に多面体模型をつくることができる“多面体タイル”

    • 3次元世界の認識を育むために
       私たちの暮らす環境そのものは3次元立体であり、その生活空間は自然物も人工物も ほとんどのものは立体の造形です。とくに現代では芸術や造形の世界もほとんどが平面 ではなく立体や空間・環境の造形であり、3次元の世界であるといえる。アカデミー賞 受賞で、世界的に著名になったアニメの宮崎駿は、子ども時代を思い出して、「のりし ろ部分を作って画用紙を貼り合わせると立体ができると知ったときには、世界の秘密に ふれたような気がして本当にドキドキした」と語っている。彼の平らな紙から失敗しな がら立体を作る幼児体験が、平板に見えがちな世の中を奥行きのある世界に変貌させる 宮崎アニメの原点かもしれません。また、宮崎の2次元の平面から3次元立体が作られ ることへのドキドキ感・不思議感(sence of wonder)の子ども体験は、数多の子ども にとっても知的好奇心を伴って想像性と創造性を高めるに最適な幾何学的「学び」を持 続させることになるでしょう。  ところが、現在の教育カリキュラムは宮崎の子ども体験を妨げているといっても過言 でない状況です。今次指導要領改訂でも、「算数・数学活動を通して創造性の基礎を培 う」と唱っていることとは裏腹に、この教育状況をいっそう進め、想像性と創造性を高 める「空間の学び」をますます貧弱にしています。  この不適切な教育環境を生み出したのは、他でもなく、3次元世界の認識を自然醸成 する環境を欠いた教育状況です。別の言い方をすれば、宮崎の子ども体験であった、実 物の模型と対応させながら行う教育に適ったツールが乏しかったためです。このため     実物に触れたり、自分で作ったり できずに、見たままの状態を表した見取図や、立体を切り開き平面に表した展開図だけ を見て考えさせることに終始し、その結果、幼少・大人を問わず、立体を難しく感じさ せてきたのでした。  そしていま、この待望久しかった、手軽に多面体模型をつくることができるツールと しての“多面体タイル”(仮称)が誕生しました。
      ⇒⇒⇒⇒
      上図左の正三角形タイルの三隅1辺1/3の所で折れ線を入れた20 枚から右の多面体(サッカーボール)が作られる(色紙は別途張付け)


      2次元の平板なタイルから3次元の多面体を創る という一見矛盾する名称がこのツールの特徴を語 っています。    この実際に組立てるということを通してさまざ まな数学的経験を体験できる。  例えば、正三角形、正方形、正五角形は繋ぎ合 わせれば右図のように正多面体が作られるが、正 六角形を面とする正多面体ができない事実を身をもって知る。  つまり、正五角形を三つ貼り合わせると、そこには三方に 稜をもつ頂点ができるが、このまわりの平面角の和は、
            3×(108°)=324°
      となり、この値は360°より小さい。   (右上図の場合は正三角形5枚で頂点まわりの平面角の和は 5×(60°)=300° の例。原理的にはこのセット4つで正20面体ができる)    ところが、左のように正六角形を三つ貼り合わせる(左図の  例は正三角形6枚)と、頂点部分の平面角の和は     3・(120°)=360°  となって、これら三つの正六角形は一平面上にあることがわ  かる。つまり、立体角をつくるためには、頂点に集まる各面  は一平面上にあってはならず、平面角の和は360°より小さくなくてはならないか  らです。



    • 3次元世界認識の数学手法
       古今東西人間は空間に存在するイメージを、一旦、二次元の平面に投影して構成や構 造を考え、創造するという能力を自然と身につけてきた。人間だけがもつ二次元から三 次元へ移行させるコンバージョン能力(以下、平面と立体の双方向変換能力)です。つ まり、一枚の紙面にスケッチをしてイメージをふくらませ、設計図面を引き、構築する というプロセスは、立体構成のもっとも基本的な作業・工程です。したがって、平面を 扱う領域を平面構成、立体や空間を対象とするものを立体構成として分野を分けている 「構成学」では、色彩や形を考察する場合、平面上で考察するほうが便利であり、構成 の概念を捉えやすいという立場を採っている。また、建築のためのデザイン学校の基礎 教育でも造形要素や造形の秩序をほとんど二次元の平面上で教育するという。そして数 学上で本格的にこれを体系づけ、今日の『画法幾何学』という学問を創り上げたモンジ ュ(1746ー1818)は、その書の冒頭で画法幾何学の目的を次のように言っていた。    画法幾何学の任務は二つある。    第一に、長さと幅との2次元しかもたない紙の上に長さ、幅、高さの3次元を    もつ空間図形を厳密に定義できるものとして写すことである。    第二に正確な図形から空間図形の形を認識し、空間図形の形と位置からでて    くるすべての結論を導き出す手続を教えることである。  モンジュの提唱したこの数学手法の核心は、科学の方法としての分析・総合です。彼 のいう第一の目的が分析であり、第二の目的が総合です。

    • 3次元世界の認識方法としての『分析と総合』
       第一の目的の「分析」はつぎのように言い換えることができます。  一つの立体図形を上から見る水平の平面の平画面と、横から見る垂直の平面の立画面 に、立体図形を真上から平画面の上に投影し、その影を描いた平面図。同じく、真横か ら立画面に投影して影を描いた立面図。そして総合とは、この平面図と立面図から立体 図形を想像し描くことです。  モンジュの扱ったのは、現在の正投影法や透視図法の一部など3次元空間の図形を平 面上に表示する方法一般を研究するものなのです。  一般に、分析より総合のほうが難しい。平面図と立面図をみて実物を思い浮べるには ある程度の習練がいる。それが楽々とできる技師たちは総合力が発達しているといえよ う。技術者のこの総合力を子どもの時から自然醸成するステップの第一歩として、幼い 子どもや生徒が遊ぶときに使う一連の紙製やプラスチック製等の品を与え、その遊びを 通して想像力を育むことを考えます。  この趣旨のものとしては、すでに「折り紙の幾何」や「しきつめの幾何」があります が、これとの違いは、三角形や四角形、円などのタイルを基本パーツとして、それを総 合して多面体をつくることと、その逆の、多面体から展開図や見取図、そして基本パー ツにまで分解・分析する、という「3次元立体の分析と総合」に主眼があることです。


  2. 「おもちゃ」で育む前「空間」的経験の段階(幼少期)
     この段階における遊びの中心は、三角形や四角形の基本パーツから兜や魚などを作っ たり、親や教師が作ってくれた三角錐や四角錐の多面体を基本のパーツとして使ったさ まざまな「造形遊び」です。

    • 多角形タイルを基本パーツにした「造形遊び」の例
      ⇒⇒⇒ 星  兜 ⇒⇒⇒ 魚(かれい)

    • 多面体を基本パーツにした「造形遊び」  つぎの三枚の写真のように、大小様々の四面体から作られた立方体を真ん中の写真の ようにバラバラに解体し、この状態から再び立方体に構成する立体版「当て嵌めパズル」 を完成させる『分析と総合』の遊びです。 ⇒⇒⇒⇒⇒⇒ また、上の左端と右端の写真の模様が異なるように、色別の四面体を数種類の模様に構 成する遊びもできる。さらに、大小様々の四面体を該当する位置に当て嵌めて立方体に 完成させる遊びや、違った模様を作るために色付き四面体を配置する位置を意図的に該 当する位置に当て嵌めて立方体を完成させる遊びなどは、これを通じて「位置」の認識 を育むことができることもわかる。  真ん中の写真の各種多面体26個で一セットであす。この各々を作る三角形タイル(△) と四角形タイル(□)の使用枚数を一覧表にすると下表のようになる。
                  △    □    三角錐  8個 32枚  0枚    四角錐  2個  8枚  2枚    1/2角錐  8個 16枚  8枚    1/4角錐  8個  8枚  6枚     計   26 個  64枚  16枚 総計 80枚 (お入用の方の注文先;
      只今、品切れ中につき販売中止)   

    • キューブ遊び

      ⇒⇒⇒  上右写真は左写真の7種類のパーツから作った立方体(解の数は480通りもあると言わ れています)の一つです。このパーツのもとの最小立方体を2種類から7種類まで使って 様々な形を作る遊びにすると63種類の立体を作ることができる(最小立方体もパーツに入 れると70種類)。最初の7種類のパーツには、ガードナー・キューブやコンウエイ・キュ ーブなどと考案者である世界の数学者の名前を冠した多くの種類がある(写真のキューブ はソーマあるいはニキーチン・キューブ)。また、日本のパズル作家・芦ヶ原伸之氏のザ・ キューブは解が一つしかないことがコンピュータで確かめられています。  一辺10cmの正6面体から作られた各パーツは、一見大きすぎると思われるだろうが、 幼児たちの学び合いや教え合いの協同作業をごく自然に生む意味から、一辺数 cmの木片 の正6面体から作られ、各自の手元で扱われる木片パーツより「社会性」に富んでいる意 味でより教育的といえるでしょう。  キューブは、パズルや教育だけでなく、インテリア家具そのものや家具の配置、さらに 建物のミニチュアモデルとして使用されるなど発展性あるものです。


  3. 分析・総合の遊びとしての「空間」的経験の段階(小学中〜中学生期)  幼い子どもや生徒の「平面と立体の双方向変換能力」を育む遊びのツールにしたのが、 この(多角形)タイルでした。そしてこの段階でテーマにしたいことは幾つかある。
    • 多面体を分解して基本パーツである(多角形)タイルにいたる。

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      逆に、
    • 基本パーツから各種多面体を作る。
       正三角形パーツ4枚で正三角錐もしくは正四面体を作る動画を 最初に見ていただいたが、折り曲げたり、切ったりすることによって、違った形の多面体が 作られるところが、この多面体タイルの面白いところである。  例えば、下左図のパーツ3枚で正四角錐の 1/2が作られる。

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      正方形パーツを対角線で2つ折りして1/2四角錐を作る。この作る過程を動画でご覧になる方は、   をご覧下さい。
       次は、正方形パーツの対角線2本を折ったり、切り離したりすることによって、わずか 2枚(正方形パーツと正三角形パーツ)から四面体が作られる場合。

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      このわずか2枚で四面体が   正方形をカット細工   正四角錐の1/4
      この作る過程を動画でご覧になる方は、    をご覧下さい。

      こうして各種多面体が作られる

      前項『「おもちゃ」で育む前「空間」的経験の段階』も一部に含んだ、

    • 複雑な多面体を分解して基本の多面体にいたり、基本多面体から複雑な多面体を再 構成する。 モンジュが『画法幾何学』の冒頭で謳っていた、
    • 見取図と多面体と展開図の三位一体的把握の部分です。  見取図を見て多面体を予想して作らせる。逆に、多面体を分解した展開図を予想 させ、実際分解して確かめる。はたまた、展開図から多面体を予想させ、実際作ら せる。
      下の展開図を多面体にしたら?  右の正20面体を展開図にしたら?
    • 体積(容積)比較や断面図などの種々の数学問題に挑戦する段階(中高生期)
       この段階以前の「タイル de 多面体」で『分析・総合』する遊びの部分は、単に「遊び」でなく、 タイルによって組立てたり分解したりする体験が「数学する」にあたって必要不可欠である。  例えば、数学成書において、「角錐の体積が、(1/3)(底面積)(高さ) であることの証明は、積分 学まで待たなければならない」と書かれているが、「タイル de 多面体」で遊んだ後、つぎのよう に難なくできる。

      ⇒⇒⇒⇒⇒⇒
      上直方体の体積4a3 四角錐(茶)は1/6だから、 四角錐の底面の一辺√2aとすると     体積は(1/6)・4a3 =(1/3)・2a3 底面積2a2 したがって、 四角錐の体積 (1/3)・2a2・a     これは (1/3)(底面積)(高さ) の構造になっている   [三角錐はアナタがどうぞ] この「タイル de 多面体」の『分析・総合』の遊びには“発見”的要素があり、その後で、辺(稜) に値を与え、これを数学的に証明するのに指針となる、という役割を果たし、まるであのアルキメ デスの『方法』を体験するかのようです。 ●アルキメデス、『方法』を語る

        私は、幾何学的命題を、重心に関する力学的考察という手段によって研究していく特殊な  方法を発展させました。この方法は発見的な性格を持っています。という意味は、その方法  は正確な証明を与るものではない、ということです。   多くの定理は、最初にこの推理の方法を用ることにより、私に明らかになったものです。  もちろん、この方法は実際の証明を与えはしませんでしたが、私はのちほど、私の機械学的  方法によって推測した定理を、幾何学の伝統的方法で証明しました。人が、もし前もって問  題のある種の知識を機械学的類似を通じて得ていて、何が証明されるべきかを知っていたな  ら、その問題に証明を与えることは非常に容易なものとなります。
      以下、このアルキメデスが語った『方法』を意識しつつ各種問題解説をご覧下さい。
         正方形タイル1枚を対角線で折り曲げ、三角形タイル2枚と作った四面体は、正四角錐の 半分で一見直角に思えない角ができる。これが直角であることの証明を試みよう。
      • 正方形を対角線で折り曲げて作った四面体の角度を計算する
      • ⇒⇒⇒⇒⇒⇒                                  右のモデルにおける頂点C、Dから辺ABへの2本の垂線CHとDHは、対角線の2等分線だから 長さは等しく CH=DH。この2辺と斜辺CDで作られる断面△CDHは、 CH=DH、斜辺CDの2等辺 三角形であるから、∠HCD= ∠HDC=45°したがって、三角形の内角の和が2直角より ∠CHD=90 ° 次に、暗記ものにさせられている「正三角錐の重心は垂線を3:1に内分する点」を求めよう。

      • 記憶させなければ導けない?正三角錐の重心
      • ⇒⇒⇒⇒⇒⇒  4本の垂線が一点で交わっていることが見える中央のモデルで、△ABMを断面とする四面体 を作る。その一つの四面体の断面が右の写真である。このG、G2を結ぶと、 △ABMにおいてAG2=BG1 より AB // G2G1 よって  △ABM∽△G2G1M G2は△ACDの重心だから辺AMを2:1に内分する点だから  AM:G2M=3:1=AB:G2G1(中点連結定理の拡張により) △ABG∽△G2G1G したがって AG:GG1=3:1                      (これを解析幾何的計算で証明するのは省略)  三番目に、「正四角錐・正三角錐の体積とその計算」をしてみよう。
      • 体積(容積)比較 右写真の灰色の4角錐と橙色の四面体の稜の長さは等しい。  このとき、二つの体積にはどのような関係(何倍もしくは何分の1か)が成り立つだろう か?  次の体積計算の値を比較すると2倍であることが分かる。しかし、この関係、実は計算抜 きの四角錐と四面体の実物比較から容易く分かります(省略)。
      • 正四角錐の体積計算(本節冒頭に掲載)
      • 正三角錐の体積計算

        ⇒⇒⇒
        一辺aの直方体の体積a3 三角錐(橙)は1/3だから三角錐の体積(1/3)・a3 三角錐の底面の一辺を√2aとし計算し、垂線√3a/√2  底面積√3a2/2 したがって、 三角錐の体積(1/3)・a3 =(1/3)・√3a2/2・2a/√3     つまり (1/3)(底面積)(高さ) の構造になっている

      • 4角錐(あるいは3角錐)の稜(辺)を2倍したとき、体積は何倍になるだろうか?  実際に並べると8倍であることは分かるが、四角形(あるいは三角形)の辺を2倍にする と、4倍になることも体験させた上で、次元解析(n2、n3)による思考(辺が3倍なら面積 9倍、体積なら27倍になることなど)ができるようにしたい。
      • 多面体タイルと断面図  入試で出題される立体図形の問題では断面を絡めるのがほとんど。  すでに、体積や直角、そして重心を題材にしたところで「多面体タイル」で断面を考えたり、 それを切断加工して直接断面を作ったりして考えてきた。このように断面状態を再現したり、 直接作ることをふんだんにできるところに「多面体タイル」が、見取図や展開図だけに頼って いたこれまでの指導法に比べて優越性がある。子ども・生徒に触れさせなくしたり、作ったり させないような使い方はけっしてさせてはならない。  幾つかを例示する。
        • 右写真の灰色の4角錐と橙色の四面体の稜の長さは等 しい。このとき、二つの体積はどのような関係(何倍 もしくは(1/何分)倍か)が成り立つだろうか? また、稜の長さを a としたとき、それぞれの体積を a の式で表せ。




        • 立方体の対角線の中心を通る断面は正6角形。この断面で切った多面体の展開図 はどうなるだろうか?
        • 4角錐(あるいは3角錐)の稜を2倍したとき、体積は何倍になるだろうか?



           また、稜の長さを a としたとき、2aの稜の4角錐(あ  るいは3角錐)の体積を a の式で表せ。





        • 正多面体が5種類しかないことを証明する。(オイラーの多面体定理)





        • 立体の大学入試問題を一つ。
             
          1. 問題.座標空間内に図のようにA(1,0,0)、B(0,1,0)、 C(0,0,1)となる正8面体ABCDEFをとる。



            (1)正8面体の外側に△ABCを1つの面にもつ正4面体PABCを  つくるとき、頂点Pの座標を求めよ。 (2)さらに△CDF、△ADE、△BEFのそれぞれを1つの面とし  て、正8面体の外側に同じように正4面体QCDF、RADE、  SBEFをつくる。これら4つの正4面体を正8面体につけ加  えると、正4面体PQRSができることを証明せよ。                    (東京学芸大)  この小問(1)の通常の解法は、つぎのような空間解析幾何的 方法です。△ABCが正3角形であることから   点Pは、△ABCの重心を通り平面ABCに垂直な直線上に ある。  ここで△ABCの重心は(1/3,1/3,1/3)で、平面ABCの方程式は x+y+z=1 である から、点Pの座標は P(p,p,p) (p>0)とおける。  このとき、PA=AB=√2 より  (p-1)2+p2+p2=2 つまり p=1    よって P(1,1,1)
          2. 多面体タイルで立体問題を直観的に解く  冒頭に書いたように、立体が難しいと感じる原因の一つは、実物に触れたり、自分 でつくったりできずに、この問題のように見取図(見たままの状態を表した図)や 展開図(立体を切り開き平面に表した図)だけを見て考えさせることが挙げられます。 私は、立体空間を理解させるには、この実物の模型と対応させながら行うのが何より も有効だと考えます。  そこで、ここでこの問題の題意と解答の方針を多面体タイルで模型を作り、考える 実際を素描します。  下図左は、正三角形タイル8枚の多面体タイルで作った正8面体の半分の4角錐 (正三角形タイル4枚と正方形タイル1枚で構成)をxyz-平面に載せた状態です。 下図右は、△ABCを1つの面にもつ正4面体PABC(正三角形タイル4枚で構成)を重ね た状態です。
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             問題の頂点Pの座標は、正四面体PABCの底面△ABCの頂点Pの座標を求めればよ いことが分る。         ここで CP は、xy-平面に平行であることから点Pのz座標は点Cと同じ。同じく


             P点のx座標とy座標は、右図においてxy-平面に下ろした垂 線PTの足Tのx座標とy座標であるから、TUがx軸に平行、AT がy軸に平行であることから点Aと点Bに同じであることが直 観的に分る。  この「タイル de 多面体」での数学問題の解法の方針と解 答の推測はけっして正確な証明を与えてくれはしないが、 この後、通常の空間解析幾何的方法で証明する指針にはで きる。 これは、「アルキメデスの方法」の発想の教育への適用の試みです。
             小問(2)の題意を“多面体タイル”でつくると右図のようになり、PQRSは正4面体に なっていることは一目瞭然です。
             この小問(2)も空間解析幾何の方法で解くのが高校数学 の常道ですが、多面体タイルでPQRSが正四面体になること を知った後、合目的的に解く。 △CDFの重心は、(-1/3,-1/3,1/3)で、平面CDFは、 x+y-z=-1 よって点Qの座標は、Q(q,q,-q)(q<0)とおける CQ=√2 より q2+q2+(-q-1) 2=2 すなわち、q=-1   よって Q(-1,-1,1) となる。  同様にして、R(1,-1,-1),S(-1,1,-1) となる。このとき    PQ=√(1+1)2+(1+1) 2+(1-1) 2 =2√2     QR=√(-1-1)2+(-1+1) 2+(1+1) 2 =2√2   RS=√(1+1)2+(-1-1) 2+(-1+1) 2 =2√2 SP=√(-1-1)2+(1-1) 2+(-1-1) 2 =2√2 またPQ、PR、PS、QR、RS、SQの中点がそれぞれC、A、B、D、E、Fとなり正四面体PQRS ができる。
          3. ベクトルの「4面体の切りロ」問題にも(解略)  4面体OABCにおいて,ベクトルOA,OB,OCは互いに直交している. OG=1/4(OA+OB+OC)となる点Gを通りベクトルOGに直交する平面による 4面体OABCの切り口は,どのような図形か. ベクトルOA,OB,OCのそれぞれ の長さa,b,cの関係により区分して述べよ.  また,a=7,b=8,c=9 のとき,その切り口 の面積を求めよ.           (89 京都大・理)
          4. 高校入試問題を解く
          5. 問題:
            • 左図の立体ABCDEFGHは,1辺の長さがacmの立方体 である.

               点Pは、辺AD上の点で、AP:PD = 2:1とする。いま、3点F, C,Pを通る平面でこの立方体を切ったとき、切り口の図形 を右の図に実線で書き入れよ。 また、2つに分けられた立体のうち、頂点Bがあるほうの 立体の体積を求めよ。            (山形県、類・他多数) 略解 2直線CP,BA の交点をOとすると,切り口の平面は点O,Fを通る.直線OFと辺 AEの交点をQとおくと,切り口は,4角形PQFCとなる.  AP:PD = 2:1であるから AP:AD = AP:BC = 2:3 また,(平面APQ)//(平面BCF)であるから,2つの3角すいOAPQとOBCFは相似で, 相似比は 2:3・・・・・ したがって,その体積比は  23:33 = 8:27・・・・・ ・とAB = a(cm) であるから OA = 2a (cm)   すなわちOB = 3a (cm) よって,3角すいOBCFの体積は  1/3・△BCF・OB = 1/3{(1/2)・a・a}・3a = (1/2)a3 (cm3) これと・より,求める立体の体積は (1/2)a3{1-(8/27)}= (1/2)a3・(19/27) = (19/54)a3 (cm3)
            • 右の図のような、1辺の長さが2cmの立方体がある。辺BFの中点をSとし、 3点A,S,Gを通る平面でこの立方体を切った。(解略)

              (1) この切り口はどのような形の4角形になるか。 (2) 右下の図は、もとの立方体の展開図に、切り 口の4辺のうちの2辺をかき入れたものである。 残りの2辺をかき入れて図を完成せよ。 ただし、図の中の・印は各辺の中点を示してい る。 (3) 切り口の4角形の周の長さを求めよ。    (4) 切り口の4角形の面積を求めよ。 (鳥取県、類・他)   事実、解析幾何学が隆盛を極めた17・8 世紀、その方法が全く代数的で、何ら図形的 興味が感ぜられないという不満があって、当 時の純正幾何学者は、古典幾何学に射影(p- rojection)と切断(section)という考えを 導入し、これを近代的に発展させ、新しい幾 何学、『射影幾何学』を建設したのだった。  人間だけがもつ二次元と三次元の間のコン バーション(変換)能力を育むことをめざす立場からすると、解析幾何の隆盛はけっし て良い風潮ではないと考えたのでしょう。この批判を数学上で本格的に体系づけ、今 日の『画法幾何学』という学問を創り上げた先駆者がモンジュだったのですが、「射 影」と「切断」という考えの導入に貢献したのは、透視図法を初めて研究して、絵画 の世界に『遠近法』を導入したレオナルド・ダ・ビンチでした。  「分析と総合」の方法をその核心とするモンジュの『画法幾何学』は、彼の「解 析への応用」(微分幾何学の先駆)、「航海術への応用」などの仕事の後、「双対 の原理」の着想を得て「すべての幾何学を含む」と称せられる『射影幾何学』を経 て、さらに、「運動群または変換群に対して不変な性質を研究するのが幾何学であ る。種々の変換群を与えることによって、対応する種々の幾何学を生ずる」と画期 的な主張をしたクラインのエルランゲン目録に至る。また、オイラーの多面体定理 (v-e+f=2頂点の数 v,辺の数 e,多角形の数 f)が示す幾何学的事実は、当時「位置 の幾何学」と呼ばれ、現在はトポロジー(位相幾何学)と呼ばれている幾何学の原 点なのです。そこでは、「幾何学=図形の学」ではけっしてなく「自然界を記述す る言語が幾何学である」ことが鮮明になる(ハンセン著『自然の中の幾何学〜み つばちの巣から宇宙論まで』トッパン参照)。  この幾何学の大海原へ学ぶ人々を出航させるには、「空間の学び」を平面幾何の 学びに矮小化させることのない学びの環境づくりが欠かせません。そのツールにこ の多面体タイルを位置づけようではありませんか。
          (まだまだ未完です。'04.8.8 山岸昭則)